2014年11月22日(土)、築地本願寺・講堂にて、特別オープン文化講演シリーズ“講演&食&交流の愉悦”第十回「日本食文化:精進料理のこころ」を開催致しました。
当協会理事長・三村京子の司会により会がスタート。
講演者は、昨年に引き続き長島博先生でした。
今年はパワーポイントで精進料理の歴史、精進料理の概略、そして精進料理の心について語って下さいました。

日本料理におけるひとつのジャンルとして確立されている精進料理。和食のルーツとも言えるほど、日本料理の発展に大きな影響を及ぼしました。 精進料理には三流派があり、日本の曹洞宗、臨済宗、黄檗宗で常に仏教の教えと共にある僧侶のための食事でした。精進料理は、本膳料理、会席料理、茶懐石と違い、料理の提供形態ではなく、用いる素材に言及しています。 従って、精進だからと言ってそのシーンは不祝儀の席だけとは限らず、全て一汁三菜であるわけでもなく、客人をもてなすときには本膳形式など立派な仕立てをすることもあります。
精進料理にはルールがある。
《五法を駆使し、五色を盛る》
五味を持つ五色の材料を五法で調理し、盛り付けるという料理の姿勢。
・五つの味付け(甘い、辛い、すっぱい、苦い、塩辛い)をしなければいけない
・五つの調理法(生、煮る、焼く、揚げる、蒸す)を用いなければいけない
・五つの色(赤、白、緑、黄、黒)を使った献立をつくらなければいけない
長島博の精進料理の心
精進料理はもともと、雲水(修行僧)の作る料理。
作ることから食べることまでが修行でした。
食とは本来、生きながらえるためのもの。
この世の動植物には食物連鎖、生命体としての連鎖があります。
人間にとって生きることとは、全てから命をいただくことです。
ここに人間の罪=強欲があります。
全ての命に生かされていることに、毎日の食事で、感謝をすることが大切です。
たとえ肉や魚を使っても、素材を大切に扱って料理をし、感謝を込めて残さずに食べる。
これこそが、心にも体にも良い、精進料理と精進のこころです。
講演最後に、江戸の名工、現代の名工を受賞された長島先生らしい包丁技を実演してくれました。 まずは、家庭でも作れる「雪輪」。手元を見たいと、参加者は前に出てきて興味津々!
食材は、一瞬にして作品に。雪輪大根の上に乗るのは蛙。中心にはお正月用の獅子頭。そして、後ろには輪違い大根。(輪違い大根とは、天明五年(1785年)に発行された「大根一式料理秘密箱」に記載され、江戸時代に流行した飾り包丁の技術。百年以上絶えていた技を長島先生が復活させました。)
講演・実演後、長島博監修・精進料理をいただきました。 築地本願寺で唱えられる食前のことばを、皆で合唱しました。「多くのいのちと、皆様のお陰により、このご馳走を恵まれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます」
見事な会津塗りの碗類で精進料理を楽しむ参加者。遅いお昼でお腹が空いていたのか、全員大満足!

小川料理長より献立と器の解説をいただきました。メニューで一番のサプライズが鰆湯葉でした。どう見ても、湯葉がお魚に見えました! また、器は本物の会津塗りの立派な赤漆。手に良く馴染み、食事は精進の精神といえども贅沢な気分になりました。
小川料理長に食事の解説をいただきました。 質疑応答は活発でした。中でも毎日新聞の大坪氏による質問で会場に朗らかな笑い声が響き渡りました。「世界遺産となった和食。外国人にどのようにしてうまみを理解させ、説明させたら良いでしょうか?」答えは、それぞれの国や地域と、その時の季節感に応じた美味しいものを和風に仕上げることが、世界に和食を広める鍵である、ということでした。
全国技能士連合会及び全国日本調理技能士連合会 片田勝紀会長と、全日本司厨士協会総本部 宇都宮久俊会長に、結びの言葉を賜りました。身も心も温まる、とても美味しい一年の締めを、大勢の皆様とご一緒に楽しませていただけた幸せを感じる会となりました。
皆様の参加こそが、友情の架け橋の原動力です。